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監督:大森一樹
ロケ地:札幌、小樽
300年後の北海道はどうなっているのだろう。町のありようも、人の暮らしぶりも、きっと様変わりしているだろうけれど、正直言って想像出来ない。映画「満月MR.MOONLIGHT」は、江戸時代から300年後の北海道にタイムスリップしてきたお侍と、現代の札幌で生きる女性とのラブロマンスを描くファンタジー。釧路を舞台にした「挽歌」で知られる作家・原田康子による原作で、何人もの監督が映画化を希望したという注目作だ。
札幌の高校教師・まり(原田知世)は中秋の満月の晩、豊平川の河川敷で変わった男性と出会う。杉坂小弥太と名乗る彼(時任三郎)は、なんと津軽藩(弘前藩)の武士だという! 寛文10(1670)年、蝦夷地でアイヌと松前藩が壮絶な戦いを繰り広げた「シャクシャインの乱」を密偵中、松前藩に追われ、どうしても故郷(現在の青森県)に帰りたい一心からアイヌの老婆にまじないをかけてもらったところ、なぜか時代を飛び越えてしまったというのだ。最初は取り合わないまりだが、行動を共にするうち彼を理解し、恋心を抱くようになる。ところが、まじないの期限は1年間、別れの時が近づくのだった。
誰もが車輪付きの乗り物(=自転車や車)を使いこなし、チカチカ光る小箱(=信号機)で道の往来を確認しなければならないようなせわしない世界だが、シュワシュワの麦酒(=ビール)はうまい!杉坂の新鮮な反応に笑っていたら、恋焦がれた青森・弘前城がすっかり観光地化されたのを知って困惑する様子に、複雑な気分になった。人の世は刻々と移り変わる一方、彼が「お山さま」と崇める岩木山や豊平川など、身近な自然は私たちよりもっと長い時を超え、ずっとそこにあることに改めて気づかされる。
札幌の雪まつりを楽しんだり、浦臼のチャシ(アイヌ語で「砦」「囲い」の意味)跡に足を運んだり。杉坂が北海道の風土や歴史に触れる展開にも見どころがあるが、やはり郷土の夏を彩る「弘前ねぷたまつり」を目にするシーンは印象的だ。勇壮華麗なねぷたが練り歩く会場で、ハッと何かを思い出す杉坂。それは、藩主・津軽信政(柳葉敏郎)が「後の世まで受け継がれる祭りをやりたい」と話していたこと。藩主の思いが300年後まで実を結んでいることを実感した彼の表情に、こちらまで胸が一杯になる。原作でも弘前ねぷたを見る場面はあるが、藩主との回想エピソードは映画オリジナル。直後に、弘前城に飾られた刀を取り返すべく、まりと2人で忍び込み、満月をバックに颯爽と立ち去る遊び心満載のクライマックスシーンが続き、物語を大いに盛り上げる。
さて、杉坂の胸を熱くさせた「弘前ねぷたまつり」は、新型コロナウイルスの影響で残念ながら2020・2021年と2年連続で中止された。藩主の柳葉が、祭りへの思いを「戦に強いだけが国の力ではない。国の力とは、ここに住むすべての者たちの力だ」と語った通り、地域に根付いた伝統文化は住民の生きる力。必ず復活し、これから300年後の世まで続いていくものと信じている。
イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。何人もの監督が手を挙げたという「満月」。原作小説の文庫本(新潮社)解説には、なんと本作(脚本・大森一樹)とは別の脚本家による映画化案が綴られています。それによると、物語を半年間に凝縮し、「女性と交われば呪いは解ける」という秘密を知ったまりが、それでも杉坂と愛し合うことを決意する…という意外なストーリー。実現しませんでしたが、ちょっと見てみたかったかも!
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ちょうど67年前の今頃、夕張炭鉱は興奮に沸いていた。なぜなら、〝ベルさん″の愛称で親しまれる人気女優・山田五十鈴が、自分たちと同じ坑夫姿で映画撮影に励んでいたからだ。読む
本物の探偵には会ったことがないけれど、映画に出てくる探偵は格好いい。といっても私が好きなのは、どこかおどけて三枚目、でも、ここぞという時には強くて優しい、哀愁漂う探偵だ。読む
「コタン」とは「集落」を意味するアイヌ語で、最近では朝の連続テレビ小説「なつぞら」主題歌の歌詞に登場して新鮮な思いがした。読む
美人に弱い恐妻家の社長(森繁久彌)、気配り上手な常務(加東大介)、真面目一辺倒の技術部長(小林桂樹)、なまりが強烈な豪快社員(フランキー堺)。読む
ミステリーに疎い私でも、タイトルだけは知っていた「点と線」。原作は、作家・松本清張が初めて手掛けた長編推理小説で、雑誌の連載が終了したその年のうちに映画化して話題を集めたのが本作だ。読む
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30本以上の北海道ロケ映画に出演した高倉健。男気あるやくざや、実直な仕事人など、北の果てに生きる一本気な男を魅力的に体現した彼のイメージを一言でいうなら“寡黙で不器用”。読む
「テキヤ殺すにゃ刃物は要らぬ。雨の3日も降りゃあいい」。映画「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎(渥美清)は、ご存じ啖呵売の露天商。読む