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監督:岡本喜八
ロケ地:安平(東追分)
恐れ多くて近付けない。けれど、一度はお会いしてみたい憧れの脚本家、倉本聰さん。
リアルタイムで見始めたのは、2005年のテレビドラマ「優しい時間」から。20代の私は毎回ラストで感涙。撮影のために建てられた富良野の喫茶店にも足を運んだ。その後も「風のガーデン」「やすらぎの郷」「やすらぎの刻~道」といった連続ドラマを楽しみ、代表作「北の国から」シリーズはレンタルで一気見。最近は、1970年代に放送された東芝日曜劇場時代のHBCドラマをインターネットの動画配信で鑑賞し、半世紀近く経っても全く色褪せない物語、セリフの数々にしびれている。
そんな倉本さんが脚本を担当した映画「ブルークリスマス」を初めて観たのは、10年前のこと。北海道ロケの〝駅映画〟について調べていたところ、映画好きの先達から「北海道らしい駅とは一線を画した描き方の異色作」としてお薦めされたのがきっかけだった。
邦画界の鬼才・岡本喜八監督とのタッグと知り、期待して観たはずなのだが……正直言えば、第一印象はそれほど記憶にない。確かに、国鉄時代の無人駅舎という東追分駅は、主人公(勝野洋)が恋人(竹下景子)から秘密を打ち明けられる場所として登場する。不安を抱えた男女の静けさが、激しい列車の通過音と対比され、異様な緊張感が流れていた。
ところが、最近見直してギョッとした。未知の現象に対する差別と偏見。プロパガンダを駆使した権力者の横暴。コロナのパンデミックや独裁者による戦争に苦しむ令和の時代を、まさに予見しているようではないか!
物語は、国防庁特殊部隊に所属する置(勝野)と、国営放送の記者・南(仲代達矢)を中心に展開する。行きつけの床屋店員(竹下)に思いを寄せる置。一方、知人記者(岡田裕介)の恋人である新人女優・高松夕子(新井春美、現・新井晴み)がドラマのヒロインに抜擢され、喜ぶ南。忙しくも平和だった2人の日常は、「青い血の人間がいる」という驚愕の事態によって狂わされていく。
「青い血」という噂が広まった高松はドラマを降板し、自殺。真相を探った南は、パリ支局に飛ばされてしまう。一方、組織の命令で「青い血」抹殺に加担する置だが、愛する女性(竹下)も信頼する同僚(沖雅也)も「青い血」だと判明し、苦しい立場に追い込まれる。世界中に恐怖と不信が蔓延する中、クリスマスイブの夜、恐ろしい計画が実行されるのだった。
「特撮を一切使わないSF映画」を目指したという本作だが、前年にあの「スター・ウォーズ」シリーズ第1作目(エピソード4/新たなる希望)が公開。世の中がSFブームに沸く中、本作の大いなる挑戦は当時あまり受けなかったようだ。とはいえ、単なる反骨心だけでこの異色SF大作を生み出したわけではないことは明らか。作品が放つ〝警戒音〟は、今を生きる私の胸に強く鳴り響いている。
倉本さんにしてみれば、遅すぎるかもしれない。それでも私は、青い血と赤い血が雪の上で悲しく混じり合ったラストシーンを忘れない。
文&イラスト 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。倉本さんが脚本兼初監督を務めた釧路ロケ「時計 Adieu I'Hiver」(1986)をいつか観てみたい! ちなみに、倉本さん脚本&岩見沢ロケのHBCドラマ「ばんえい」(1973)に亡き祖父がエキストラ出演したことが、我が家の秘かな自慢です(笑)
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美人に弱い恐妻家の社長(森繁久彌)、気配り上手な常務(加東大介)、真面目一辺倒の技術部長(小林桂樹)、なまりが強烈な豪快社員(フランキー堺)。読む
ミステリーに疎い私でも、タイトルだけは知っていた「点と線」。原作は、作家・松本清張が初めて手掛けた長編推理小説で、雑誌の連載が終了したその年のうちに映画化して話題を集めたのが本作だ。読む
“マイトガイのアキラ”と聞けば、この作品を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。日活黄金期の看板スター・小林旭の代表作であり、一世を風靡した「渡り鳥」シリーズの第1作。読む
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