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監督:岩井俊二
ロケ地:北見(留辺蘂)、旭川
この春、何人の若者が北海道から旅立つのだろう。進学や就職など事情はそれぞれだろうけれど、知らない土地で新生活を始めるドキドキ感は変わらない。私も経験したあの胸の高鳴りを、そっとすくい上げた映画が「四月物語」だ。
まだ雪の残るローカル駅のホーム。物語は、東京・武蔵野の大学に通うことになった主人公・楡野卯月(松たか子)が、家族(松本白鸚さんら本当のご家族が総出演!)に見送られるシーンから始まる。別れの場面はあっという間で、桜舞う春の風景に切り替わると、アパートへの引っ越し作業がスタート。騒がしいサークルの勧誘、退屈な入学式、クラスメイトとの自己紹介……。憧れのキャンパスライフがめまぐるしく展開するも、卯月はどこか心ここにあらず。それもそのはず。実は彼女がこの大学を選んだのは、人に言えない、ある秘密があった。
ずっと気になっていたのに観そびれていた本作。最近観て、冒頭に登場する駅舎に「るべしべ」の看板を見つけて驚いた! ところが、映画のエンドロール・撮影協力に「北海道」の文字は見当たらず、市民グループ・NPO法人「北の映像ミュージアム」(札幌)の北海道ロケ作品リスト(2021年発行「シネマてくてく」より)にも記載がない。試しにJR北海道の広報に問い合わせたところ、直近の留辺蘂駅の写真とともに「記録はないけれど、おそらく映画のセット用では」との回答をいただいた。念のため、公開時のパンフレット(ミニ冊子が5冊セットの豪華版!)も取り寄せたけれど、道内で撮影された記録は見つけられなかった。
というわけで、おそらく道外の駅を北海道の「るべしべ駅」に見立てて撮影したのだろう(ちなみに、パンフレットに収録されたシナリオには「北国のプラットフォーム」とあった)。とはいえ、初々しい松さん演じる卯月が「北海道旭川出身です」と口にするシーンもあり、東京で一人暮らしを始めた道産子学生の〝冒険〟をみずみずしく描いた、北海道ゆかりの1本として私の心には刻まれた。
細かいことだけれど、道民として引っかかるのは、オホーツクに位置する「るべしべ」(現北見市)を旅立った彼女が、道北の街・旭川出身と話すところ。確かアパートの隣人にも「旭川の豆」(=旭豆?)を手渡していた。本作の3年前に小樽ロケ「Love Letter」(本コラム12回目で紹介)を撮った岩井俊二監督のことだから、安易に地名を出したわけではないはず。となると(オホーツク地方の方には申し訳ないが)、彼女の見栄から出たウソだろうか。大都会に対する彼女のささやかな虚栄心を、そんな形で表現しているとすれば、何とも微笑ましい。
本作が公開された1998年3月、私は高校進学を控える15歳だった。あの頃なら故郷を離れる女子学生に共感しただろうが、今はつい、駅のホームに立つ母親の心境に思いを馳せてしまう。いつか同じ状況を迎えた時、私は笑顔で我が子を見送れるだろうか……ちょっと自信がない。
文&イラスト 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。本作でちらっと出てきた旭川銘菓「旭豆」は、若き吉永小百合さんが出演する旭川ロケ「疾風小僧」(1960年、西河克己監督)にばっちり登場します。道内ロケはありませんが、沢田研二さん主演「土を喰らう十二ヵ月」(2022年、中江裕司監督)の松たか子さんも素敵でした!
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ミステリーに疎い私でも、タイトルだけは知っていた「点と線」。原作は、作家・松本清張が初めて手掛けた長編推理小説で、雑誌の連載が終了したその年のうちに映画化して話題を集めたのが本作だ。読む
“マイトガイのアキラ”と聞けば、この作品を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。日活黄金期の看板スター・小林旭の代表作であり、一世を風靡した「渡り鳥」シリーズの第1作。読む
北海道の農業高校を舞台にした同名人気マンガの実写映画化。青春学園ものとはいえ、内容はよくある恋愛系でも、スポーツ系でもない。読む
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