朝日IDをお持ちの方はこちらから
AFCのログインIDをお持ちの方(2024年7月31日までにAFCに入会された方)はこちらから
新規入会はこちらから(朝日IDの登録ページが開きます)
監督:西河克己
ロケ地:赤平
突然だが、もしも10万円が手に入ったらどうするだろう。買い物、旅行、生活費? そしてお金を使った後、それが全くの手違いで、処理した人が責任を負ったと知ったら?
映画「生きとし生けるもの」は、そんな運命のイタズラから出会った平社員の男女と、社長息子との関係を通して、貧富の差、人間の平等について考える物語だ。
主人公は鉱業会社に勤める伊佐早靖一郎(三國連太郎)。ボーナス袋に1万円(※現在の約6万円相当)多く入っていることに帰ってから気づいた彼は、返金しようとしたものの、弟・令二(三島耕)に渡してしまう。空襲で両親を失い、兄に養ってもらっている令二は、数カ月前からアルバイト先をなくしたことを言い出せず、学費を滞納寸前だったのだ。翌日、会計担当の菅沼民子(南寿美子)が1万円を穴埋めしたと知る靖一郎。直接詫びようと呼び出すも、彼女の友人・八代恵美(北原三枝)の勘違いによって交際の申し込みと受け取られ、真実を言い出せないまま、デートを重ねてしまう…。
原作は山本有三による同名小説。山本といえば「路傍の石」が代表作だが、本作はその前、大正15(1926)年に朝日新聞に連載されたもので、病気のため執筆を中断し、未完となった。登場人物のエッセンスを抜き出し、ラブロマンスを絡めた現代的な社会ドラマに再構築したのは、脚本を担当した橋本忍と潤色した西河克己監督の力だろう。
物語はその後、民子を秘書に抜擢し、求婚する社長息子・曾根夏樹(山内明)との三角関係に発展。と言っても、秘密を抱える靖一郎は黙って身を引く様子。そんな兄の卑屈な態度や、生まれながらに裕福な夏樹の傲慢さにいら立つ令二は、兄と同じ会社に入社したものの、東京本社ではなく、北海道支社勤務を希望し、労働組合員として炭鉱ストの先頭に立つのだった。
赤平の炭鉱街を舞台とした終盤。ストを聞いて駆け付けた社長・周作(山村聰)、息子の夏樹、秘書の民子の前で、靖一郎は平謝りに謝る。そんな兄の傍らで、決して頭を下げようとしない令二を見つめ、社長たちを泊めた老人・遠藤(笠智衆)は、ある思い出を語り出す……。
タイトルは、紀貫之が古今和歌集の序文で詠んだ「生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける」に由来する。映画では、「生きとし生けるもの、光を求めない者はいない。けれど、枝を張った大木(=富める者)は、日陰(=貧しい者)ができるばかりに、その枝を切られなければならないのだろうか」という問い掛けが、笠智衆の朴訥とした語りを聞き終えた時、胸に迫ってくる。
さて、蛇足だが、原作者・山本有三の経歴を調べたら、話題の映画タイトルを発見。「君たちはどう生きるか」。吉野源三郎が1937(昭和12)年に執筆し、2017年の漫画化でベストセラーになった児童書は、山本が中心となって編集した「日本小国民文庫」の一冊として企画されたものだそう(初版本は山本と吉野の共著となっている)。そのタイトルを借用したジブリの最新作「君たちはどう生きるか」がこの夏に公開された。宮崎駿監督が10年ぶりに手掛ける作品の題名に86年前の児童書を選んだのは、自身が子どもの頃読んで感動したという原体験からだそう。戦時下で、山本が残したもう一つの〝問い〟は、時代を超え、新しいアニメ映画の形となって、私たちに突きつけられた。
文&イラスト 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。「劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro」(松居大悟監督)を7月、サツゲキで鑑賞。WOWOWの番組収録のため、帯広の重要文化財「旧双葉幼稚園園舎」で行ったスピッツの極秘ライブに、アフタートークやメイキングを加えた内容。なぜ帯広で?という疑問は、あのドラマ主題歌「優しいあの子」がきっかけだったと知り、帯広育ちの私はニンマリ。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で「私たちのハァハァ」(2015)を観て以来、ファンの松居監督が登場したアフタートークも嬉しかったです!
函館に行くと、必ず足を運ぶ場所の一つが「カフェやまじょう」。なぜなら店主の太田誠一さんは、知る人ぞ知るロケコーディネーター。読む
いよいよ2025年4月、日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開幕する。55年ぶりの大阪開催として話題だが、前回の1970年、大阪万博に熱狂する日本で作られた映画が、「家族」だ。読む
「俺、山口登。紅葉沢小学校3年。もうすぐ4年です。これ、俺の姉ちゃん、知香(ちか)。体は大きいけど、運動神経は俺よりよっぽど鈍い」読む
「馬が出る映画を集めた〝馬映画祭〟をやりたい!」と映画好きの先達が言っていたけれど、もし開催するなら絶対に上映してほしい1本が、「雪に願うこと」。読む
《母を軸に子の駆けめぐる原の晝(ひる)木の芽は近き林より匂ふ》 帯広市中心街からほど近い緑ヶ丘公園の一角に、歌人・中城ふみ子の歌碑を見つけたのは、3年前の秋のこと。読む
帯広出身・熊切和嘉監督の最新作「658㎞、陽子の旅」(2022年)が、第25回上海国際映画祭(2023年6月)で最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞の3冠に輝いた。読む
手前みそで恐縮だが、AFC「映画と握手」上映会第3弾(6月、札幌・共済ホール)で観た「幸福の黄色いハンカチ」(1977年、山田洋次監督)は、実に面白かった。読む
突然だが、もしも10万円が手に入ったらどうするだろう。買い物、旅行、生活費? そしてお金を使った後、それが全くの手違いで、処理した人が責任を負ったと知ったら?読む
世界的冒険家・植村直己についてほとんど知識を持たなかった私が、映画「植村直己物語」に興味を抱いたのは、おびひろ動物園で「植村直己記念館(氷雪の家)」を偶然見つけた十年ほど前のこと。読む
あいみょんの歌を、最近よく口ずさんでいる。現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「らんまん」の主題歌ではなく、この映画の挿入歌「誰にだって訳がある」の方だ。読む
「サムライ」といっても、刀を差したお侍のことではない。札幌や旭川、函館など北海道各地にかつてあった、ごく貧しい人たちが集住した場所=通称・サムライ部落のことである。読む
「さよなら」という言葉を、今まで何度口にしただろう。最近めったに使わなくなったのは、「もう会えないかも」という別れのニュアンスが、日常では少し大げさに感じるからかもしれない。読む
この春、何人の若者が北海道から旅立つのだろう。進学や就職など事情はそれぞれだろうけれど、知らない土地で新生活を始めるドキドキ感は変わらない。読む
「PICU 小児集中治療室」「日本統一 北海道編」「続 遙かなる山の呼び声」と、昨年は北海道ロケドラマが豊作だった。読む
最近観た日本の青春SF映画に「未来では映画文化が過去のものになる」という設定が出てきて驚いた。と同時に、「タイパ」「ファスト映画」なる言葉が生まれる昨今なら、あり得るかも…と悲しくなった。読む
北海道の牛乳を毎朝飲んでいる。子どもの頃から当たり前だったこの味が、実はものすごく美味しくて、たくさんの努力と苦労の上に成り立っていることを知ったのは大人になってから。読む
68年前の1954年9月、北海道は悲痛な思いに沈んでいた。26日に到達した台風15号が、函館港に停泊中の青函連絡船「洞爺丸」など5隻を転覆・沈没、さらに日本海に面した岩内町に大火をもたらしたのだ。前者は死者1430人に上り、後者は町の3分の2を焼き尽くす大惨事となった。読む
四方を海に囲まれた北海道。漁業生産量は全国の約2割を占め、漁業従事者数も日本一の「水産王国」とあって、ロケ作に漁師が登場することも少なくない。読む
「黒澤明が世に送り出した珠玉の名作が、今、甦る!」と銘打った「黒澤明DVDコレクション」(朝日新聞出版)のラインアップに、未見の北海道ロケ映画「愛と憎しみの彼方へ」を見つけたのは今年初めのこと。読む
タイトルだけで、切なくも艶のある、あの独特な歌声がよみがえる。映画「ハナミズキ」は、大ヒットした一青窈の同名曲をモチーフに制作されたラブストーリー。読む
今年生誕100年を迎える旭川生まれの作家・三浦綾子(1922-99)。彼女原作の映画は、文壇デビュー作「氷点」(1966年、山本薩夫監督)を皮切りに、「われ弱ければ 矢嶋楫子伝」(2022年、山田火砂子監督)まで6本。読む
週に2、3回はコンビニに行く。仕事の資料を印刷したり、支払いを済ませたり。最近は、店限定のスナックが欲しくて数店舗を探し歩いたこともあった。読む
稚内生まれのロックバンド、Galileo Galilei(ガリレオ・ガリレイ)をご存じだろうか。2010年、10代の若さでメジャーデビューすると、CMソングやアニメ主題歌で一躍人気となった道産子アーティスト。読む
高校生の時「七人の侍」の面白さに衝撃を受け、20代で「生きる」を観てさめざめと涙を流した私が、同じ黒澤明監督の「白痴」を知ったのは10年ほど前。札幌に引っ越した30代始めの頃だった。読む
「幌舞(ほろまい)駅」のホームには、小雪がちらついていた。札幌で遅い初雪が降った11月下旬、南富良野町に向かった。読む
岩見沢にあったばんえい競馬場の仕事に祖父が携わり、今や世界で唯一の開催地となった帯広で育った私だが、馬を身近に感じたことはなかった。読む
歴史にまったく疎いので、史実を題材にした映画を避けてきた私が、この「おろしや国酔夢譚」を紹介したくなったのは、道内唯一の人形浄瑠璃公演一座・さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座の公演「大黒屋光太夫ロシア漂流記」(2021年2月)を観たから。読む
300年後の北海道はどうなっているのだろう。町のありようも、人の暮らしぶりも、きっと様変わりしているだろうけれど、正直言って想像出来ない。読む
田中邦衛が亡くなった。享年88。ドラマなら、富良野ロケ「北の国から」で演じた子ども思いの実直な父・黒板五郎をまず思い浮かべるが、北海道ロケの映画にも、意外とたくさん出演している。読む
太古に生きた恐竜の化石が数多く発掘され、注目を集める北海道。映画に関して言えば、空想上の巨大生物“怪獣”が何度か上陸し、スクリーンの中の道民をパニックに陥れている。読む
映画館の暗闇で、久しぶりに心が震えた。ワンシーンごとにヒリヒリした痛みを感じ、場内が明るくなってもすぐに席を離れたくないような深い余韻に打たれた。読む
中学生・高校生のときめく恋心や切ない青春を描く、いわゆる“キラキラ映画”にいまいち乗れないのは、私自身それほどキラキラした覚えがないからかもしれない。読む
黄金色の稲穂のじゅうたんが、風に揺れていた。9月中旬、家族でぶどう狩りをした帰り道、後志管内赤井川村で目にした光景だ。読む
9月11日は女優・夏目雅子さんの命日だった。35年前、27歳の若さでこの世を去った彼女が、あふれんばかりの輝きを刻んだ1本が、マグロ漁を巡る人間ドラマ「魚影の群れ」だ。読む
伝説の映画に期待し過ぎて、肩透かしを食うことがある。高倉健さんファンには申し訳ないけれど、彼が主演した「君よ憤怒の河を渉れ」もそのひとつ読む
バナナは夜食にぴったりだけれど、眠たい深夜、食べたいと人に頼まれたらどうだろう。相手は重度の身体障害者で、自分はボランティア(映画の中では主人公に「ボラ」と呼ばれる)の介助者だ。読む
メールやSNSが当たり前の今だからこそ、直筆の手紙は嬉しい。それがたとえ、不格好な文字やつたない文面だったとしても。読む
秋も深まる10月半ば、家族を誘って旭川へ行ってきた。この地が生んだ作家、三浦綾子(1922~99年)の功績を伝える「三浦綾子記念文学館」を再訪するためである。読む
ちょうど67年前の今頃、夕張炭鉱は興奮に沸いていた。なぜなら、〝ベルさん″の愛称で親しまれる人気女優・山田五十鈴が、自分たちと同じ坑夫姿で映画撮影に励んでいたからだ。読む
本物の探偵には会ったことがないけれど、映画に出てくる探偵は格好いい。といっても私が好きなのは、どこかおどけて三枚目、でも、ここぞという時には強くて優しい、哀愁漂う探偵だ。読む
「コタン」とは「集落」を意味するアイヌ語で、最近では朝の連続テレビ小説「なつぞら」主題歌の歌詞に登場して新鮮な思いがした。読む
美人に弱い恐妻家の社長(森繁久彌)、気配り上手な常務(加東大介)、真面目一辺倒の技術部長(小林桂樹)、なまりが強烈な豪快社員(フランキー堺)。読む
ミステリーに疎い私でも、タイトルだけは知っていた「点と線」。原作は、作家・松本清張が初めて手掛けた長編推理小説で、雑誌の連載が終了したその年のうちに映画化して話題を集めたのが本作だ。読む
“マイトガイのアキラ”と聞けば、この作品を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。日活黄金期の看板スター・小林旭の代表作であり、一世を風靡した「渡り鳥」シリーズの第1作。読む
北海道の農業高校を舞台にした同名人気マンガの実写映画化。青春学園ものとはいえ、内容はよくある恋愛系でも、スポーツ系でもない。読む
30本以上の北海道ロケ映画に出演した高倉健。男気あるやくざや、実直な仕事人など、北の果てに生きる一本気な男を魅力的に体現した彼のイメージを一言でいうなら“寡黙で不器用”。読む
「テキヤ殺すにゃ刃物は要らぬ。雨の3日も降りゃあいい」。映画「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎(渥美清)は、ご存じ啖呵売の露天商。読む