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監督:沖田修一
ロケ地:網走
いつか南極に行きたい。無謀と笑われそうな夢を、わりと本気で抱いている。
きっかけは4年前、南極観測隊の調理担当となった西村(堺雅人)の日々を描くコメディー映画「南極料理人」を観たこと。北海道在住の原作者・西村淳さんの爆笑エッセイや南極観測に関する本を読むうち、南極大陸の壮大な風景や神秘性にすっかり魅せられてしまったのだ。そこでまず私がチャレンジしたこと。それはリアル・南極料理人。つまり、映画に出てくる料理の再現である。
たとえば、具沢山のおにぎりと熱々の豚汁。炊飯器で作る炊き込みチャーハン。生瀬勝久演じる雪氷学者・本(もと)さんの誕生会を盛り上げたローストビーフは、さすがに劇中の豪快な方法(ご覧になっていない方はイラストからご想像ください)はできないので、撮影を支えたフードスタイリストの飯島奈美さん・榑谷孝子さんによるレシピ本を参考に湯せん調理した。手打ち麺がボソボソになったラーメンを除き、どれもそれなりに家族を喜ばせた記憶があるけれど、何といっても強烈だったのは「伊勢えび」で作る"エビフライ"だ。そもそも伊勢えびが手に入らず、本場・三重県南伊勢からお取り寄せ。硬い殻に四苦八苦しながら下準備し、こんがり揚げたてを頬張ると、えびみそを混ぜた濃厚タルタルソースと相まって、分厚い身がもう絶品だった。
そんな私にとって、函館の知人・金森晶作さんが第60次南極観測隊に選ばれたことは2018年のビッグニュースだった。出発前、映画「南極料理人」を紹介する自作の冊子を送ったところ、なんと昭和基地からオーロラの絵葉書が届いて驚くやら嬉しいやら。2020年3月に帰国され、現在はとかち鹿追ジオパークの専門員として働く彼に今回メールしたところ、なんと本作を昭和基地で鑑賞したそう!「映画の舞台は昭和基地より1000キロ内陸のドームふじ基地。今はインターネットが通じ、水も我慢せず使えるので、大変だったんだなぁと生活者視点で観ました」と感想を教えてくれた。
せっかくなので“南極の忘れられない味”も聞いてみたら、「シンガポール伝統のプラナカン料理」と意外な答え。「越冬生活中盤、シンガポールにいた友人から教わり、食べたこともないのにリクエスト。準備していなかったと思いますが、バナナの葉にのったエスニック料理を数品作ってくれて美味しかったです」。さらに寿司やケーキなどにまつわる思い出を伺うと、映画さながら調理担当者の奮闘が、観測隊員の過酷な日常を支え、彩ったことが伝わってきた。(ちなみに、金森さんの担当は大気や雪氷のモニタリング観測。映画に登場した「本さん」や「平さん」のモデルとなった方々とも交流されたそうです)
家族や恋人と切り離された南極という特殊な場所が、コロナ禍の今見ると妙に身近に思えるから切ない。どんなにさみしくても辛くても、美味しい料理とユーモアが人を元気にすることを、映画は教えてくれる。今年一年、できるだけ笑って日々の食卓を楽しみたい。
イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。なかなか映画館に行けない2020年でしたが、シアターキノで観た「アイヌモシリ」と「燃ゆる女の肖像」は忘れられない傑作!一方、オンライン開催の「イタリア映画祭2020」でコメディー「私が神」、「第25回ながおか映画祭」でドキュメンタリー「タゴール・ソングス」と出会い、オンライン配信の可能性も感じました。
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寅さんファンにとって、2024年は楽しい年だった。なぜなら「男はつらいよ」第1作の劇場公開から55周年となり、「Go!Go!寅さん」と題したプロジェクトが始動。読む
今年は高倉健さんの没後10年。本コラムではこれまで、「森と湖のまつり」(1958年)「網走番外地」(1965年)「鉄道員 ぽっぽや」(1999年)など読む
寒さが身に沁みると、人恋しくなるのはなぜだろう。クリスマスや大晦日は、大切な人と過ごしたいもの。「そして僕は途方に暮れる」は11月後半から年明けの物語。読む
函館に行くと、必ず足を運ぶ場所の一つが「カフェやまじょう」。なぜなら店主の太田誠一さんは、知る人ぞ知るロケコーディネーター。読む
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「俺、山口登。紅葉沢小学校3年。もうすぐ4年です。これ、俺の姉ちゃん、知香(ちか)。体は大きいけど、運動神経は俺よりよっぽど鈍い」読む
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《母を軸に子の駆けめぐる原の晝(ひる)木の芽は近き林より匂ふ》 帯広市中心街からほど近い緑ヶ丘公園の一角に、歌人・中城ふみ子の歌碑を見つけたのは、3年前の秋のこと。読む
帯広出身・熊切和嘉監督の最新作「658㎞、陽子の旅」(2022年)が、第25回上海国際映画祭(2023年6月)で最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞の3冠に輝いた。読む
手前みそで恐縮だが、AFC「映画と握手」上映会第3弾(6月、札幌・共済ホール)で観た「幸福の黄色いハンカチ」(1977年、山田洋次監督)は、実に面白かった。読む
突然だが、もしも10万円が手に入ったらどうするだろう。買い物、旅行、生活費? そしてお金を使った後、それが全くの手違いで、処理した人が責任を負ったと知ったら?読む
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あいみょんの歌を、最近よく口ずさんでいる。現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「らんまん」の主題歌ではなく、この映画の挿入歌「誰にだって訳がある」の方だ。読む
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「さよなら」という言葉を、今まで何度口にしただろう。最近めったに使わなくなったのは、「もう会えないかも」という別れのニュアンスが、日常では少し大げさに感じるからかもしれない。読む
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最近観た日本の青春SF映画に「未来では映画文化が過去のものになる」という設定が出てきて驚いた。と同時に、「タイパ」「ファスト映画」なる言葉が生まれる昨今なら、あり得るかも…と悲しくなった。読む
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68年前の1954年9月、北海道は悲痛な思いに沈んでいた。26日に到達した台風15号が、函館港に停泊中の青函連絡船「洞爺丸」など5隻を転覆・沈没、さらに日本海に面した岩内町に大火をもたらしたのだ。前者は死者1430人に上り、後者は町の3分の2を焼き尽くす大惨事となった。読む
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「黒澤明が世に送り出した珠玉の名作が、今、甦る!」と銘打った「黒澤明DVDコレクション」(朝日新聞出版)のラインアップに、未見の北海道ロケ映画「愛と憎しみの彼方へ」を見つけたのは今年初めのこと。読む
タイトルだけで、切なくも艶のある、あの独特な歌声がよみがえる。映画「ハナミズキ」は、大ヒットした一青窈の同名曲をモチーフに制作されたラブストーリー。読む
今年生誕100年を迎える旭川生まれの作家・三浦綾子(1922-99)。彼女原作の映画は、文壇デビュー作「氷点」(1966年、山本薩夫監督)を皮切りに、「われ弱ければ 矢嶋楫子伝」(2022年、山田火砂子監督)まで6本。読む
週に2、3回はコンビニに行く。仕事の資料を印刷したり、支払いを済ませたり。最近は、店限定のスナックが欲しくて数店舗を探し歩いたこともあった。読む
稚内生まれのロックバンド、Galileo Galilei(ガリレオ・ガリレイ)をご存じだろうか。2010年、10代の若さでメジャーデビューすると、CMソングやアニメ主題歌で一躍人気となった道産子アーティスト。読む
高校生の時「七人の侍」の面白さに衝撃を受け、20代で「生きる」を観てさめざめと涙を流した私が、同じ黒澤明監督の「白痴」を知ったのは10年ほど前。札幌に引っ越した30代始めの頃だった。読む
「幌舞(ほろまい)駅」のホームには、小雪がちらついていた。札幌で遅い初雪が降った11月下旬、南富良野町に向かった。読む
岩見沢にあったばんえい競馬場の仕事に祖父が携わり、今や世界で唯一の開催地となった帯広で育った私だが、馬を身近に感じたことはなかった。読む
歴史にまったく疎いので、史実を題材にした映画を避けてきた私が、この「おろしや国酔夢譚」を紹介したくなったのは、道内唯一の人形浄瑠璃公演一座・さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座の公演「大黒屋光太夫ロシア漂流記」(2021年2月)を観たから。読む
300年後の北海道はどうなっているのだろう。町のありようも、人の暮らしぶりも、きっと様変わりしているだろうけれど、正直言って想像出来ない。読む
田中邦衛が亡くなった。享年88。ドラマなら、富良野ロケ「北の国から」で演じた子ども思いの実直な父・黒板五郎をまず思い浮かべるが、北海道ロケの映画にも、意外とたくさん出演している。読む
太古に生きた恐竜の化石が数多く発掘され、注目を集める北海道。映画に関して言えば、空想上の巨大生物“怪獣”が何度か上陸し、スクリーンの中の道民をパニックに陥れている。読む
映画館の暗闇で、久しぶりに心が震えた。ワンシーンごとにヒリヒリした痛みを感じ、場内が明るくなってもすぐに席を離れたくないような深い余韻に打たれた。読む
中学生・高校生のときめく恋心や切ない青春を描く、いわゆる“キラキラ映画”にいまいち乗れないのは、私自身それほどキラキラした覚えがないからかもしれない。読む
黄金色の稲穂のじゅうたんが、風に揺れていた。9月中旬、家族でぶどう狩りをした帰り道、後志管内赤井川村で目にした光景だ。読む
9月11日は女優・夏目雅子さんの命日だった。35年前、27歳の若さでこの世を去った彼女が、あふれんばかりの輝きを刻んだ1本が、マグロ漁を巡る人間ドラマ「魚影の群れ」だ。読む
伝説の映画に期待し過ぎて、肩透かしを食うことがある。高倉健さんファンには申し訳ないけれど、彼が主演した「君よ憤怒の河を渉れ」もそのひとつ読む
バナナは夜食にぴったりだけれど、眠たい深夜、食べたいと人に頼まれたらどうだろう。相手は重度の身体障害者で、自分はボランティア(映画の中では主人公に「ボラ」と呼ばれる)の介助者だ。読む
メールやSNSが当たり前の今だからこそ、直筆の手紙は嬉しい。それがたとえ、不格好な文字やつたない文面だったとしても。読む
秋も深まる10月半ば、家族を誘って旭川へ行ってきた。この地が生んだ作家、三浦綾子(1922~99年)の功績を伝える「三浦綾子記念文学館」を再訪するためである。読む
ちょうど67年前の今頃、夕張炭鉱は興奮に沸いていた。なぜなら、〝ベルさん″の愛称で親しまれる人気女優・山田五十鈴が、自分たちと同じ坑夫姿で映画撮影に励んでいたからだ。読む
本物の探偵には会ったことがないけれど、映画に出てくる探偵は格好いい。といっても私が好きなのは、どこかおどけて三枚目、でも、ここぞという時には強くて優しい、哀愁漂う探偵だ。読む
「コタン」とは「集落」を意味するアイヌ語で、最近では朝の連続テレビ小説「なつぞら」主題歌の歌詞に登場して新鮮な思いがした。読む
美人に弱い恐妻家の社長(森繁久彌)、気配り上手な常務(加東大介)、真面目一辺倒の技術部長(小林桂樹)、なまりが強烈な豪快社員(フランキー堺)。読む
ミステリーに疎い私でも、タイトルだけは知っていた「点と線」。原作は、作家・松本清張が初めて手掛けた長編推理小説で、雑誌の連載が終了したその年のうちに映画化して話題を集めたのが本作だ。読む
“マイトガイのアキラ”と聞けば、この作品を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。日活黄金期の看板スター・小林旭の代表作であり、一世を風靡した「渡り鳥」シリーズの第1作。読む
北海道の農業高校を舞台にした同名人気マンガの実写映画化。青春学園ものとはいえ、内容はよくある恋愛系でも、スポーツ系でもない。読む
30本以上の北海道ロケ映画に出演した高倉健。男気あるやくざや、実直な仕事人など、北の果てに生きる一本気な男を魅力的に体現した彼のイメージを一言でいうなら“寡黙で不器用”。読む
「テキヤ殺すにゃ刃物は要らぬ。雨の3日も降りゃあいい」。映画「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎(渥美清)は、ご存じ啖呵売の露天商。読む