「書」は誰もが親しむことのできる芸術だが、批評することは難しい。書道という言葉から連想されるように身体と密接に結びつき、文章で表現するより臨書することでその真価を感じるのが、古来当たり前だったからだ。その書批評、書論という領域を北海道で切り開いたのが『北海道書道史稿』の佐藤庫之介である。本書は1961年~2013年に様々な場で発表された批評論考を、『中野北溟』の著書もある美術評論家柴橋伴夫が中心となって編集した。愛書家必携の1冊。
書名「佐藤庫之介書論集 書の宙へ」
編者 佐藤庫之介書論集刊行委員会
出版社 中西出版
発行 2021年4月15日
価格 4180円(税込)
アイヌを出自に持つことを知り、アイヌと向き合うことで始まった痛みと苦悩。次第に社会から切り離され沈黙した著者が、人類学研究を通じて「私がサイレント・アイヌである理由」「私の痛みの原因」を明らかにしていく研究書である。特に、理論的前提を幾重にも積み重ねていく様は説得力があり、家族4代の物語の歴史化と自伝的民族誌(オートエスノグラフィー)により、自らの生きる世界の構造や分断の状況が明快に語られる。本当に考えさせられる1冊である。
書名「〈沈黙〉の自伝的民族誌」
著者 石原真衣
出版社 北海道大学出版会
発行 2021年2月13日(補筆2刷)
価格 3850円(税込)
Vol.23
ワイルドライフマネジメント/ウアイヌコロ コタン アカラ ウポポイのことばと歴史
著者は長年にわたりヒグマやエゾシカ研究に携わり、「北海道エゾシカ管理計画」策定や日本学術会議による環境省への提言「人口縮…