学部生としてシマフクロウの人工給餌地で生態調査をはじめ、保護増殖、生息地の環境復元、更には繁殖が途絶えた道北地域での拠点づくりなどで中心的役割を果たしてきた著者の、32年にわたる活動の記録である。謎に包まれていたこの絶滅危惧種の生活史や家族史が詳細に描かれるだけでなく、著者の情熱が周囲や状況を変化させていく姿は本当に感動的だ。人と野生鳥獣とが適切な距離を保つことの重要性を、この本を通じて考えていただければと、切に願う。
著者 早矢仕有子 出版社 北海学園大学出版会 発行 2022年3月31日 価格 1100円(税込)
アイヌ語でチプタチカプカムイ(舟を彫る鳥の神様)とよばれるクマゲラの生活を軸に、周囲に暮らすエゾシカやモモンガの死と生、それらの命の繋がりを、人を含めた「いのちのふね」と捉え美しい幻想的なタッチで描く絵本。小学校で不登校になり「僕にとって、絵は生きるためのもの」と記す作者は出版時15歳。「今つらい人の気持ちに、寄り添う」ために描くというその絵には不思議な温かさが宿る。今年の道展U21では優秀賞を受賞し、今後の活躍が期待される。
え・ぶん 小林嵩史 出版社 かりん舎 発行 2022年5月24日 価格 1100円(税込)