昨年5月、札幌市民交流プラザで「孤高の版画家 阿部貞夫作品展」が開催された。著者はその実行委員長であり、期間中のセミナー講師も務めた。戦前から戦後の高度成長期、貧困病魔との苦闘から独自の作風を確立し、飛躍寸前に急逝した阿部。彼の生涯を辿り、彼を支えた留萌、釧路、札幌の人々にスポットを当て、その業績を後世に残すべく上梓された。北海道の風土を養分に、見る者の魂を揺さぶる作品を残した芸術家の存在を道民の記憶に留めたい。その願いがこの伝記に結実している。
著者 森山祐吾 出版 藤田印刷エクセレントブックス 発行 2023年9月13日 価格 770円(税込)
2021年、40冊目の絵本を刊行し創作活動を終了した版画家の手島。その前後からNHK「日曜美術館」をはじめメディアで紹介された影響か、作品を多数扱っていた某画廊からあっという間に作品がなくなった。本書の前身2017年発行本も在庫切れ。待望の増補版が発行された。『しまふくろうのみずうみ』以下13作品は全頁が収録され、『しまふくろうとふゆのつき』から最終作『きたきつねとはるのいのち』まで27作品は2頁で紹介されている。手島作品を手軽に楽しめるコンパクト保存版だ。
編者 「手島圭三郎全仕事」編集委員会 出版 絵本塾出版 発行 2023年7月28日 価格 3850円(税込)